GO   (1) 伝説のロックンロ−ラ− エディ・ウィルソン誕生! 
(2) 魂の旅   
(4) マイケル映画を盗む 
(5) 永遠のエディ・ウイルソン  

(3) SPRING MADNESS (春のどんちゃん騒ぎ) 1963

イラスト: Chika Pochinosuke

撮影がスタートするまでの数週間、メイン・キャストは監督の指示に従って合宿を体験した。全員思い思いに60年代の服を身につけ、本物のバンドと同じようにリハーサルに明け暮れる。

「みんなが僕のことをエディと呼ぶようになっていた。それが僕に影響を与え始めたんだ」

こうして音楽には全く素人のマイケルもだんだん反逆のロッカーになっていく。自分のシーンじゃなくてもマイケルはスタジオの隅でギターを弾いている。自分の腕と感じられるようになるまでギターに親しもうと努めているのだ。「クルーザーズ」のメンバーの中では、他にトム・ベレンジャーとマシュー・ローレンスが音楽経験ゼロ組である。彼らもマイケルと同じように、楽器や音楽シーンと格闘していた。



「クルーザーズ」デビューの日が来た。ロケーションは郊外の名門大学。数百人のエキストラが集められ、古き良き時代の衣装で60年代のティーンを再現する。ポニーテイル、白い丸衿のシャツにカーディガン、裾の広がったギャザースカート、白いソックスにぺたんこの靴。衣装デザインはサンディ・デヴィッドソン(監督夫人)が担当した。

舞台にはすでにドラムがセットされドラマー、ケニー・ホプキンス(デヴィッド・ウィルソン)が待機している。キーボードの前にはフランク“ワードマン”リッジウェイ(トム・ベレンジャー)が座り、サル・アマト(マシュー・ローレンス)はギターをかきならしている。大御所ウェンデル・ニュートン(マイケル・チューンズ・アンチューンズ)のテナーサックスはさすが、チャック・ベリーやブルース・スプリングスティーンとセッションしていたプロの音だ。ジョアン・カルリーノ(ヘレン・シュナイダー)がタンバリンを手にして「スタート」の合図を待っている。

聴衆には演技指導が行われた。曲のオープニングで手を振る役、手拍子、アンコールのタイミング。すべて台本通りに進行するよう、入念なリハーサルが繰り返された。

ここは、“ワードマン”のたってのリクエストで彼の母校でコンサートを開く、というシーンだ。お高くとまっている名門校が嫌いなエディは始めから気が進まない。恋人のジョアンがフランクに魅かれているらしいのもエディの不機嫌に拍車をかける。それぞれの思惑を背景にコンサートがスタートした。

エディの内なる怒りと苛立ちが聴衆を挑発する。彼自身にも確とはわからない怒りがエディのステージに熱となって渦巻く。



演奏はライヴではなくテープにとった音にマイケルが口を合わせる、というものだった。エキストラは指示された通りのリアクションを返した。リハーサルそのままである。ところが、とデヴィッドソン監督は語る。

「演奏の途中からエキストラの少女たちが一人また一人、席から立ち始めたんだ。そしてあっと言う間にムードが変わった。エキストラは足をふみならし、エディ、エディ、と叫んでいた」

熱狂のあまり服を脱ごうとするエキストラが見えた。靴を頭上にかかげ踊り始める少女もいた。その内に何人かの少女がステージに駆け寄り歌っているマイケルに手を伸ばした。マイクを取られそうになり、マイケルのシャツは、そこかしこから伸びてきた何本もの手に強く引っ張られている。少女たちはエディの名前を叫びながら、マイケルをステージから引きずり下ろそうとする。驚いたスタッフが後ろからマイケルを支え、少女たちからやっとのことでマイケルを奪還した。

このような反応はもちろん監督の指示ではない。デヴィッドソンの意図は、苦労知らずのお坊っちゃま大学生と既成の道徳に反逆するロッカーの対比にあったという。自分たちの音楽じゃない、でもま、いい曲じゃないか、というむしろ冷やかなリアクションを意図した演出プランはもはや無理だった。しかし監督は制止しなかった。カメラは回り続ける。エディになりきって聴衆を興奮させたロックンローラー・マイケルを、カメラはダイナミックにとらえていく。



「一瞬なにが起こったのかわからなかった。ステージの上と下両方から引っ張られていて、気がついたらシャツが破れていたんだ」

その時の熱狂ぶりをマイケルをこう語っている。興奮したエキストラはアンコールを要求する。まるでライヴ・コンサートのノリである。

「マイケルはもっと続けてもいい、と言ったんだが」

とデヴィッドソン。しかし撮影用に準備されていたのは3曲だけだった。このような事態になろうとは。監督をはじめスタッフの誰一人、まったく想像できなかったのである。

こんな予期せぬ周りの反応は嬉しい誤算だった。この誤算はコンサート・シーンだけでなく、マイケル出演場面の撮影中に何度か見られた。そうした演出プランの狂いが作品の方向に少なからざる影響を与えることになった ………。

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